ご支援くださった皆さま方へ

「メキシコ音楽祭2009」 企画・音楽総監督 黒沼ユリ子

ご好意あふれる皆さまからのご期待に反して、このたびの「メキシコ音楽祭2009」を中止せざるを得なくなり、大変申し訳なく残念無念でございます。
目の前にせまった訪日、そして皆さまとの楽しい音楽祭を出演者一同、心から楽しみにしておりました矢先の今回の降ってわいたような事態に、ただ、ただ呆然といたしております。当初の計画より何とか3日でも早く到着できるよう、あらゆる手を尽くして搭乗便の予約変更が可能になったのが27日の午後3時。「今夜の便で出発!」と、全員に知らせたその1時間後に今度は、「訪日中止」の緊急連絡をせざるを得なくなった私の気持ちもご察し下さい。

在メキシコ日本大使館員の方から「企業関係の在留日本人家族は、今日か明日の便で一斉に帰国されます」という電話が入り、「まさかそこまでの事態とは」と立っていた私の脚が震え出しました。「今夜の便で成田までは飛べても、もしも帰って来る便がなくて、帰宅できなくなってしまっては・・・」瞬時に仲間たちの妻子の顔が目に浮かび、唇をかんで「中止」を宣言したのです。

その午後の慌しさは、ご想像におまかせいたします。日本との連絡、メキシコからの出発組のほか、南米を演奏旅行中のオリビア・ゴーラ、テルアビブから訪日のアドリアン・ユストゥス、ドイツを旅行中のジェームズ・デムスター、フランクフルトからのディエゴ・バニュエロス、サンフランシスコからの岩本憲子さん、何とか全メンバーに知らせられ、説得することが出来た時には、夜も深まっていました。

万が一にも、不幸にも日本国内で感染者が発見されるようなことになった日に、「もしや、メキシコ音楽祭で来日したあの音楽家たちがヴィールスを・・・」などとは絶対に誰の頭の中もかすめられないよう、この中止に踏み切った今は、辛い決断をしたことで安堵いたしております。

「不運は、良いことのためにしかやって来ない」というメキシコの言い習わしを信じて、事態の総てが終息し沈静した暁には、多くの皆さま方がたにご支援とご期待いただいた「メキシコ音楽祭2009」を、あらためて計画し直したいと考えております。メキシコの音楽とメキシコのアーティストたちの真髄を皆さまにお聴きいただけましたら、きっと今回の世界中からの、過剰とさえ思われる非難の声も和らぎ、メキシコとの友好の絆がこれまでよりも、さらにしっかりと結ばれるようになるのではないかと希い、翻訳の不要な音楽が必ずやメキシコ人の日本への親愛の情を伝えてくれると信じております。こちらは全員無事でおりますので、どうかご休心下さい。取り急ぎ。 黒沼 ユリ子拝



 
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