メキシコ音楽祭2011
アカデミア・ユリコ・クロヌマから生まれたメキシコが誇るヴァイオリンのヴィルトゥオーゾ
アドリアン・ユストゥス ヴァイオリン・リサイタル
ピアノ:ラファエル・ゲーラ
2011年
1月13日(木)19:00開演 東京・紀尾井ホール
1月17日(月) 18:45開演 名古屋・宗次ホール

「歌うヴァイオリニスト」アドリアン・ユストゥス
黒沼 ユリ子
偶然にも私の息子と同名だからかどうかは定かでないが、私にとってのアドリアンは言語の介在が不要な、あたかも二人目の息子にも似た不思議な存在だ。少年時代にレッスンに通って来ていた頃の彼の外観は、ごく当たり前の、または少々のんびり型の男の子にも見えたが、実は、ずば抜けた集中力の持ち主で、どんな説明にも超スピーディーな理解を示し、驚かされたものだ。
テニスに夢中で、そのトレーニングやトーナメントへの参加に向けた情熱は、どう見てもヴァイオリンへのソレを抜いていたように見えたが、その彼がある月を境に完全にヴァイオリンの虜(とりこ)になってしまったのである。「1985年4月」そう断言できるほど明確に決定的な証拠を残して。
<アカデミア・ユリコ・クロヌマ>の12名の生徒と共に初訪日した彼はツィゴイネルワイゼンを独奏し、言語では不可能だった日本人とのコミュニケーションがヴァイオリンを通せば可能であることを発見、初体験し、その不可思議な力に打ちのめされるほど魅了されてしまったのだ。メキシコへの帰途の機内ですでに将来はヴァイオリニストになる決意を固めたと言う。
幼い頃、ハイドンの弦楽四重奏曲のLPをかければ兄弟喧嘩も即座に止むことを知っていた歯科医の父親の手ほどきでヴァイオリンを弾き始めたが、それはテニスと同量の重みでしかなかった。つまり、アドリアンは日本の聴衆から受けた暖かい拍手によって今日の彼が在ると言っても過言ではない"メイド・イン・ジャパン"なのである。
「天性の音楽家」という表現には、いささかマユツバの響きも否定できないが、私はアドリアンを「歌うヴァイオリニスト」と呼びたい。彼にとっての音楽とは歌そのものであり、どんなに超絶技巧なパッセージを弾いていても、そこには必ず彼の歌う心が同席しているからだ。そして彼のヴァイオリンの音には「ヴァイオリニストに成れた人間」としての幸福感が、どの音にも満ちあふれている。この世に「音楽」という掴める実体のない不思議なモノが存在するということへの感謝の気持ちもヴァイオリンを通して常に振り撒きながら、音楽の歓びを共に分かち合う演奏が自然に生まれ、聴く者をも幸せにしてしまう音楽が流れ出てくるからだ。 
「ヴァイオリンを弾いて人々を幸せにすることが、神から与えられた自分の使命」ということを信じて疑わないアドリアン・ユストゥスの音楽は、説明抜きに人間を感動させる自然界の景観の美のように、普遍的にヒューマンな感性から生まれ、聴く者の誰にも生きる歓びを与えてしまう。今や彼は私にとっての二人目の息子以上の存在であり、メキシコが誇る宝物のひとつでもある。
 
●東京公演
公演日・開演時間 2011年1月13日(木) 19:00開演
会場 紀尾井ホール
席種・料金 指定席 5,000円
チケットお申込み 紀尾井ホールケットセンター 03-3237-0061
 
●名古屋公演
公演日・開演時間 2011年1月17日(月) 18:45開演
会場 宗次ホール
席種・料金 自由席 4,000円/学生2,400円
チケットお申込み 宗次ホールチケットセンター 052-265-1718
 
アドリアン・ユストゥス, ヴァイオリニスト
メキシコ・シティー生まれ。幼少より父親からヴァイオリンの手ほどきを受け、11歳より<アカデミア・ユリコ・クロヌマ>で黒沼ユリ子に師事。全メキシコ学生コンクール優勝。オーケストラとデビュー後、ロチェスター大学の<イーストマン音楽学校>でツヴィ・ザイトリン教授に師事し、栄誉賞つきで学位を取得。その後、<マンハッタン音楽院>にてピンカース・ズッカーマンのもとでも研鑽を積んだ。
第一回国際ヘンリック・シェリング・コンクールで一位金メダル、メキシコの「モーツァルト・メダル」、ニューヨークの国際演奏家コンクールで受賞。カーネギー・ホール、ウイグモアホール、バービカン・センター、テルアビブのアート・ミュージアム、メキシコの国立芸術宮殿、プラハ城のスペイン宮殿など国際舞台で演奏、各地で高評を得る。
ロンドンのフィルハーモニア・オーケストラとシベリウスのV協奏曲、メキシコのケレタロ・フィルハーモニーとエンリッケスのV協奏曲第1番、アメリカで現代室内楽アルバム「タペストリー」、イスラエルでのリサイタルのライブなどのCD録音がある。
東京・紀尾井ホールでの「メキシコ音楽祭2010」では、弦楽合奏団「ソリスタス・メヒコ・ハポン」と共演し、完璧なテクニックに裏付けされた「歌うヴァイオリニスト」として絶賛を浴びる。1985年の初来日以来、今回で6回目の訪日となる。
プログラム
H. シェリング
古典的前奏曲 (ヴァイオリンとピアノのための)     
イザイ
ソナタ第2番(無伴奏ヴァイオリンのための)
ベートーヴェン
ソナタ第9番 イ長調 "クロイツェル"
ポンセ
ソナタ・ブレーヴェ
パガニーニ
カプリス第5、2、17、 23 &1番(無伴奏ヴァイオリンのための)  
パガニーニ
ラ・カンパネラ
※プログラムの変更はあらかじめご了承下さい。
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